その姿はさながら、日の丸を背負ったにも等しく。
世界中のスピードジャンキーが聖地と崇めるボンネビル・ソルトフラッツ。
米国ユタ州近郊の干上がった塩の湖を舞台に、今年も恒例の最高速トライアルが開催されます。
世界からさまざまなレコードブレイカーが集うイベントに、
今年は極東から日の丸を背負って世界一を目指す電動バイクが参戦することになっています。
それが『EV-01』です。
『"EV"世界最速のインディアン』を目指して…モビテック『EV-01』の挑戦 | 感染帝国
『EV-01』は、愛知県の技術支援企業(株)モビテックの社内技術チャレンジの一環として企画され、
その成果を問うボンネビル参戦はその集大成といえるものです。
カウリング類は、ポルシェのレッドとトヨタのパールホワイトで塗装されました。
四輪車の塗装だとソリッドカラーは一般的だそうですが、二輪の塗装で使われることはあまりないそうです。
ソリッドカラーとは、パールやメタリックを含まない原色のみで調合された塗料色で、
四輪ではシルバーの塗料以外はほとんどソリッドカラーなのだそうです。
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ポルシェレッドのレコードブレイカーで思い出したのがこれ。
こちらは単にカッコいいからという理由でしたが(笑)。
ゼッケンの3は、モビテックのMと韻を踏んでいます。
そもそも、ボンネビル参戦プロジェクトはモビテックの創立30周年を記念したものだそうで、
実に幸先がいいですね。
カウリング製作におけるハイライトのひとつが、このオイルクーラーを冷却するエアダクト。
オイルクーラーは、通常のバイクだと横置きで前輪後ろに置かれるのが一般的ですが、
干上がった塩湖を舞台とするボンネビルでは飛び散った塩による目詰まりが懸念されるそうで、
結果、車体の両サイドに縦置きする案が採用されました。
ダクト形状も試行錯誤が重ねられ、新気を取り込みつつ塩害が軽減できるように、
ダクト先端のカーボン部分はすぐに取り外せるようになっているとのこと。
内部にも取り外し可能なフィルターが付いています。
こちらはリアフェンダー。リアアクスル左右には巨大なモーターが鎮座します。
モーターから伸びる配線が物々しいですね。
超ロングホイールベースが特徴的な『EV-01』のライディングポジションは超前傾姿勢で、
レコードブレイカーらしくミサイルにしがみつくさまが思い浮かびます。
シートはもちろん、胸や腕で車体を押さえつける部分にパッドが配置されているのが確認できます。
奥にある1台は、NS-1ベースの試作品『EV-00』。ここからすべてがはじまりました。
ゼッケンベースは濃いグリーンなんですが、
これはカウリングの造形を担当されたZEEZOONの青島氏もおっしゃっているとおり、
もうひとつの薄いグリーン案を支持していたのに残念無念(笑)。
理想のイメージとしてはコレですね。
2010年の電動バイクレース、ラグナセカの『FIM e-Power Championship』を制したモトシズE1pcです。
濃いグリーンはモビテックのスタッフさんに好評だったそうで、
いずれにしても環境問題を意識させるカラーリングです。電動バイクにぴったりですね。
液晶ディスプレイはこれまた電動バイクらしい、
チーム未来の『TT零13改』にも採用された専用アプリつきのスマートフォンを採用。
手前の黄色が鮮やかなカメラは、コダック製の360°撮影が可能な全天球カメラ。
超魚眼レンズのアクションカメラは市場ではまだ珍しいアイテムですが、
半天球すべてを撮影できるという優れモノ。
リコーの『THETA』がパイオニアとされるこの分野も今後が楽しみですね。
このカメラを使えばこんな映像が撮れるそうで、
GoPro一強のアクションカム市場にも新しい可能性が拓けそうです。
いずれ公開されるであろう、『EV-01』から見たボンネビルの景色にも注目したいところ。
7月末にモビテックのテクニカルセンターでお祓いを受けた『EV-01』は、
カウリングのフィッティングを含む最終確認を終えたあとに梱包され、
西海岸へ向かう船に積み込まれたそうです。
向かう場所が場所だけに、車両はスタンドごとボルトで固定され、
緩衝材をぐるぐる巻きにしてから乾燥材を大量に入れるという念の入れよう。
塩害対策として内部の減圧、真空引きもしているそうです。
いろいろとノウハウがあるんですね(;`ω´)ゴクリ
独特の高周波音が本番への期待を高めてくれますね。
目標記録は時速400km/hオーバーということで、達成されれば文句なしの世界記録になります。
ライダーを務める水谷氏一行は8月27日にボンネビルへ向けて出発する予定。
拙ログでも遠いアメリカから吉報が届くことを楽しみにしております!
最後に、今回も写真の使用をご快諾いただいた未来輪業の黒川氏に感謝いたします。
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